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反省している。今回のレース展開についてである。少し「いやらしい」走り方をしてしまった。さらに少し「かっこ悪い」こともしてしまった。 「ランナーズ 10k 春大会」それが今回のレース。あの、走る人たちが必ず手にしてしまう雑誌、「ランナーズ」の主催で、今まで僕が参加した中では、一番大規模で「お祭り度」も高い大会だ。コースは、基本的には平坦で走りやすい公園内の5kmの周回を2周する。約3000人の市民ランナーが、東京・立川の「昭和記念公園」に集まった。天気もまずまずだ。 僕のこれまでのレースにおける問題点は、なかなか自分のペースを維持することができず、前半とばしてしまい、後半失速することだった。そこで今回、僕はある作戦を考えた。レース中に自分と同じくらいの速さの人を見つけて、ある距離までその人の後をついていく。そして頃合いをみて余裕があれば、スパートする、または辛ければペースを落とす。「ペースメーカーさんを利用させていただこう」という作戦だ。 |
そして、冒頭の「反省」である。僕はあろうことか、いつも一緒に走っている「走る上司」(仮名・Tさん)を自分の「ペースメーカーさん」に選んでしまったのだ。自分の上司を、どんな理由にせよ「利用」しようとは、今思えば大変失礼なやつだ。僕の、今後のサラリーマン人生は、もう決まってしまった。どうせなら知らんおっさんをペースメーカーにするべきだった。とにかく僕はスタート後、すぐにTさんの背後にピタリとついた。そして1mから5mの間隔を保ちながら走る。ペースメーカーといっても、Tさんと僕の速さは殆ど変わらない。だからついていく僕にも余裕がある訳ではない。ただ、自分のペースが分からずいつも後半にバテてしまう僕にとって、つねにラップタイムを確認しながら、自分のペースを維持して走るTさんの走りを後ろから見ることは、非常に参考となった。 レース後半、ここまでTさんのペースにピタリと合わせていた僕は、「まだ自分には余力がある」と感じていた。よし、やろう。夢にまで見た「ラストスパート」ってやつを。今までのレースでやっていた「ラスト減速」とは違う。今ならできる。「ごぼう抜き」ってやつを。急激に自分の中でアドレナリンが分泌されるのを感じる。やがて見えてきた「8キロ地点」の表示。ここだ。僕は一気に速度をあげ、ずっと背中を見ていたTさんを抜き去った。そして、その前を走るランナー達をもぐんぐん追い抜いていく。何人ものランナーの視線を背中に感じる。背筋が震える。なんという快感だろう。今までのレースで僕がやられていたことを今僕がやっている。このまま一気にラスト2キロを華麗なスピードで突っ走り、感動のゴールを!・・・・・・・ ・・・の、筈だった。でも、やっぱり僕は、自分のペースを知らなかったのだ。快感のラストスパートは、悲しいかな200mで終わった。結果的には「ラストスパート」ではなく、「8キロ地点スパート」だった。ぐんぐん追い抜いたまでは良かったものの、わずか1分しかそのペースを維持できなかったのだ。その後に来た苦しさは、今までに感じた中で最高のものだったかもしれない。へろへろになった僕は、残りの2キロ弱をなんとか前進するので精いっぱいだった。 Tさんの談話。「8キロ過ぎたときに突然、横を抜いていきよった。ずっと後ろについていて、満を持してスパートしやがったな。ああ、どんどん離されていく・・・・・・・。あれ、おかしいな。勢い良かったけど、さっきからずっと同じところにいるな。あの勢いやと、とっくに見えなくなっててもおかしくないのに。ずっと見えてる。」 最後まで、その1分間のスパートでできた200mの差を維持したままゴール。結局、Iさんのペースが、そのまま僕のペースだったのだ。上司に対し「失礼」な走りをし、かつ「かっこ悪い」スパートも見せてしまった。でも今回、僕が得たものは多い。自分のペースが大体わかった。それを維持しながら走ることも学んだ。そしてスパートとはどういうものかも少し理解できた。今回の経験を生かして、次回のレースでは、是非「かっこいいラストスパート」をやってみたいものだ。 |