沖縄に行った。初めての沖縄。しかもマラソンしに。考えてみれば、僕は初めてのハワイも、マラソンだった。みんな馬鹿だと思うでしょう。でもいいんです、放っといてください。僕の中で最高のレジャーが「マラソン」なのだから。
那覇マラソンは、参加人数において日本最大の市民フルマラソン大会だ。毎年1万5千人以上のランナーが、42.195キロ先のゴールを目指す。県外からの参加者が約3千人だから、殆どがウチナンチュー(沖縄人)。沖縄の人たちにとってマラソンは、特別な人のする特別なことではない。生活の一部なのだ。スタートラインに立って周りの人たちの顔を見渡すと、そのことがよくわかる。みんな目がキラキラしている。笑っている。ワクワクしている。この雰囲気は、ハワイやオーストラリアで感じたのとおんなじだ。こんな中で走ってしまうと、ますますこの馬鹿げたスポーツを好きになってしまいそうだ。こわい、こわい。
12月とはいえ沖縄は暖かい。スタートラインに立った1万5千人の熱気で、むしろ暑いくらいだ。スターターは、沖縄出身の高校生女子プロゴルファー、宮里藍ちゃん。昨年は新垣渚、一昨年は「ちゅらさん」の国仲涼子だったらしい。20回記念大会となる来年は、誰がスターターを務めるのだろう。錚々たる歴代の顔ぶれを超える人物でなければならない。「世界の具志堅ヨウコウ」以外にないと、僕は思った。
那覇マラソンは、その参加者の多さにも驚くが、それに輪をかけて応援がすごい。42.195キロの間、沿道の人の波は途切れない。おっちゃんが、おばちゃんが、じいさんが、ばあさんが、おねえさんが、ヤンキーが、子供たちが、赤ちゃんが、犬が、猫が、ヤンバルクイナが・・・・は、いませんが。ロックバンド、沖縄太鼓、子ども鼓笛隊に聖歌隊。とにかく声援を送り続けてくれる。「ちばりよ〜!ちばりよ〜!」「みんな、ちばりよ!」
・・・・「ちばりよ」って何?千葉理代さんていう人の応援かな。・・・「みんなちばりよ」?この周りの人は、みんな千葉さんか?・・・・・最初はわからなかったのだが、「ちばりよ」とはウチナーグチ(沖縄弁)で「がんばれ」という意味らしい。10万人の沿道から「ちばりよ」の大合唱だ。これはもう、「ちばらない」わけにはいかんだろう。
しかも、この大会、栄養補給にはことかかない。みんなが、手に手に飲み物や食べ物を差し出してくれる。公式なエイドステーションは5キロおきにあるのだが、それが一体どこなのかわからない。沿道、総エイドステーション状態だ。水は勿論、ジュース、お茶、氷、みかん、ばなな、パイナップル、レモン、黒砂糖のかたまり、塩、チョコ、飴。揚げたてのサーターアンダーギー(沖縄ドーナツ)や、沖縄ソバまで。喜んで全部いただいていたら、タイムは遅くなるわ、おまけに太るわ。42キロもアホみたいに走って、太ってたら帰ってきたら世話ないですね。とにかく、手の抜けない42.195キロ。楽しい楽しい42.195キロ。
市会議員のおっさんが、「ランナーの皆さん、頑張ってください!日本共○党の某々、某々でございます。」手を振っている。アホか!聖なるスポーツの祭典を政治活動に利用するな!・・・まあええ、楽しいから許したる。さとうきび畑に向かって、並んで用を足すランナー達(主におっさんランナー)。アホか!聖なる沖縄の大地を○○で汚すな!・・・まあええ、楽しいから許したる。(し、僕もやる。)
それでもやっぱり後半、足が痛くなってくる。当然、苦しくなってくる。当たり前である。20キロも30キロも走ってしんどくないのは、キューちゃんくらいだろう。「しまったなあ、やっぱり膝痛くなってきたなあ。」・・・・・でも、全然心配いりませんでした。後半になってくると目立ち始める、沿道の応援の人々の手に光るもの、それは「エアサロンパス」!「すみませーん、かけてください。」駆け寄っていくと、「あと半分。ちばりよ、ちばりよ。はい今度は後ろもね」といってスプレーしてくれる。汗まみれの、疲労こんぱいの、きたないおっさんの足に、スプレーしてくれる。人の情けって、ええなあ。ウチナンチューって暖かいなあ。地球って美しい星やなあ。さあ、ますます「ちばるぞ」!そんな気になる。
ラスト10キロの登り坂は、正直きつかった。平均20度の気温は、正直暑かった。暖かい声援に感激したって、いっぱい食べ物や飲み物ごちそうになったって、しんどいものはしんどい。でもフルマラソン3回目にして、ようやく、そのしんどささえも、辛ささえも、楽しめるようになってきた気がする。(これってマゾですか?)
ゴールタイムは4時間51分。過去二回のタイムを20分上回りました。でも、けっして練習不足ではありません。体重が増えたからでもありません。今回の那覇マラソンは、とにかくとにかく楽しくて、ついつい長く長く楽しみたくて、いつもより時間をかけて42.195キロの遊びを満喫してしまいました。
・・・・・完全な練習不足と体重オーバーです。サブフォーへの道は遠のくばかり。 |