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新世紀の幕が開けた2001年1月7日、アメリカ軍横田基地(東京都福生市)で開催されたハーフマラソンに参加してきた。基地の人たちで作るランニングクラブ「Yokota Striders Running Club」の主催で、伝統のある大会だ。 最近、10kmのロードレースでは、あまり気負いや緊張感を感じなくなってきた僕だが、今回は、初めての「ハーフマラソン」かつ、新世紀の「走り初め」ということもあり、やや気合が入る。そして何より「初訪問、初体験、日本の中の米軍基地」。いったいどんなところなのか、好奇心もかなり刺激される。 JR八高線の「牛浜」は、どこにでもありそうな郊外の小さな駅だが、この日ばかりは人・人・人。人の重み駅舎が崩れ落ちそうだ。 |
人の流れに乗って歩くこと10分少々。基地に近づくにつれ、喫茶店や商店など、町全体がアメリカアメリカしてきた。やがて果てしなく広い広い基地の敷地が見えてきた。入り口の第5ゲートを抜け、いざ基地内へ。「当日、入場に際し身分チェックを行います。身分証明書を・・・・」ものものしい注意書きに、やや緊張していたが、機関銃を持った兵隊さんのチェックは、次から次へ押し寄せる大量のランナーを前にして、「はいOK、はいどうぞ」と、まったく適当なものだった。敷地内に入ると、これまた広い。中に「町」が一つ入っている感じ。メイン会場の小学校前に着くと、おりしも開会式が始まったところだった。キャロルさんという黒人の少女が、「星条旗よ永遠なれ」をアカペラで斉唱。いいですねえ。なんかアメリカって感じだ。引き続き彼女は「君が代」を、これまたアカペラで斉唱。「小柳ゆき」かと思った。僕は普段「君が代」に感動することはないけど、何故か胸が熱くなる。これが、政治や民族や思想なんかを超えた、スポーツでの国際交流というものか。 |
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とにかく、人数が多い。今まで僕が出た大会中、一番多いだろう。(結局7500人のランナーと応援の人たちが終結していた)そして独特の活気に満ちている。「第○○部隊・特製豚汁!旨い!安い!」とか下手な日本語で書いて、青い目の兵隊さんが豚汁を売っている。本当にうまいのか?とりあえずレース後の楽しみに。「××おばさんの手作りチョコレートケーキ」なんてのもある。これがまた、デカイ!。買って帰っても食いきれへん。でも飛ぶように売れている。見てくれは悪いが、結構ウマイらしい。なんか、楽しい。 ハーフマラソンのスタート時間が近づいてきた。先導車は軍用バギー。とにかく物凄い人数で先頭がよく見えない。仮装ランナーが結構多い。イヌにネコ、自由の女神に、バニーガール。 「パーン!」という銃声と、湧き起こるウェイブ、歓声。いよいよスタートだ。 |
最初の数キロは、基地の中にある町(?)の中を走る。町といっても、広場に停車した装甲車が見えたりする。塀一つ隔てた向こう側は、普通の日本の町なのに、やはり不思議な感じだ。やがてコースは町を抜け、僕達はとてつもなく広い広い、空間に飛び出た。軍用滑走路だ。あまりのデカさに圧倒された。僕達の遥か前を走るトップランナー達が豆粒のように遠くに見える。彼らを先頭に何キロにも及ぶランナーの帯が、見渡すかぎり何もないその空間を周回するように連なっている。東京のど真ん中・・・、とは言えないが、都市部のはざまに、地平線まで見えるかのような、こんなに広い空間があるなんて。これだけの場所があれば、どれだけのことができるだろう。野球場だって、サッカー場だって、公園だって学校だって、いくらでも作れる。基地って一体なんだ?考えてしまった。 |
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滑走路の周遊は約10km。長かった。走っても走っても、景色は変わらない。少し気持ちが萎えてきたそのとき、脇を走っていたアメリカ人が叫んだ。「Oh!フジヤマ!」滑走路の向こうの霞んでいた空に、まぼろしのように真冬の富士山がその雄姿を見せた。気力がかなり回復した。 この冬一番の冷え込みは、やっぱりこたえた。21kmも走ってきたのに、ゴールしたとき、体が冷え切っていた。だからこそ、「アーミー特製豚汁」。それはもう、旨いの旨くないの!(旨いの!)五臓六腑にしみわたるとはまさにこのことだ。不覚にも、アメリカ人に「しみわたらされて」しまった。悔しい。「基地って何だ?」なんて考えさせられながらも、結構満足して、「マダム○○の特製手作りケーキ」なんかしっかり買って、帰路についた僕たちだった。 |
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