Tokyo Disneyland/東京ディズニーランド
株式会社オリエンタルランドから製品として発売
Walt Disney/ウォルト・ディズニー

演者はクラス(または職場)でもっとも可愛い女の子に声をかけ、週末の予定が空いているかどうか確認して「もしよければ、一緒に東京ディズニーランドに行こう」と誘います。返事がOKであれば、待ち合わせの時間と場所を相談します。

当日、入り口のゲートをくぐる前に封筒を示し、その中にこれから起こる現象が書かれていると説明します。予言の封筒は客(女の子)に持っていてもらいます。

一緒にアトラクションを楽しんだり昼食を取ったりしているうちに、二人は徐々に親しくなっていきます。

辺りが暗くなり最後のパレードも終了した頃、客に封筒を開けてもらうと、中から「あなたは私を選ぶ」と書かれた紙が出てきます。たしかに予言が当たったことを確認してもらい、演技を終了します。

憧れの女の子と親しくなるというテーマは、古くから多くのマジシャンを魅了し続けてきました。このプロブレムを解決するために数多のCreatorが独自の技法を考案してきましたが、自然それらのすべては演者の個性に依るところが多く、汎用性に欠けるものでした。そのような背景があっただけに、この命題をほとんど自動的に達成しうる「東京ディズニーランド(以下、TDL)」の登場が、マジック界に賛否両論を巻き起こしたのは、当然の出来事であったと言えるでしょう。

「TDL」が発表された当初、演技時間はそれほど長いものではありませんでしたが、Donald Dingleがエレクトリカル・パレードをクライマックスに据えた手順を発表したことによって、夕刻を過ぎてなお続くRoutineが定着しました。現在では、パレードなしで演技を終えることは「Cups & Ballsの最後にレモンを出さないようなもの」と例えられるまでになっています。
 また、かつて女性に恐怖感を与える行為は絶対的なタブーとされていました。これは紳士の認識として間違ってはいませんが、Mickey Ammerが「危険を共有すると男女は急接近する」という考え方を提唱して以来、TDLではあえてこれを利用した演技が台頭し始めたことは有名です。いわゆる「3種のマウンテン理論(Triple Mountains' Theory)」と呼ばれる法則を利用した一連の現象は、TDLの効果を最大限に発揮できる演出法の1つと言えるでしょう。

さて、一部の技巧至上主義者は、こういった便利なアイテムを取り入れることを嫌いますし、そういった人が無理に「TDL」を用いる必要はもちろんありません。が、しかしSleightによって女の子と仲よくなれない多くの演者にとって、この製品が強力な武器になることは疑いのない事実です。効果がすべてであるという箴言に照らせば、「TDL」の使用に対して頑なになる前に、実際の客の反応を一度試してみることはけっして無駄にはならないでしょう。

過去たびたび指摘されていることですが、この製品の使い方でもっとも難しいのは最初の部分、つまり「TDL」に客を誘導する部分であり、いったん入り口のゲートをくぐってしまえば後はSelf-Workingも同様です。導入部分のハードルの高さは確かに「TDL」の数少ない欠点であり、今後この難関に愛好家がさらなる改良を寄せることが期待されています。

最後に。
あるマジックショップのカタログには、この「TDL」は“女房を質に入れてでも購入すべき”道具だと紹介されています。ですが女房以外の女性を「TDL」に誘う行為は、きわめて慎重に行われるべきであると私は考えます。


(参考)

◆ DVD
・Donald Dingle「Dingle Cruise」『Complete Wonderland of Donald Dingle』1997
・Mickey Ammer「Big Thunder Monte」『Easy to Master Disney Miracles Volume5』1997

◆ Products
・Chip & Daryl「It's a Sympathetic World」