アカプルコ

             # 油彩 キャンバス ミクストミディア  765mm×910mm

 メキシコといってもイメージが沸かない人でも、カンクーンやアカプルコといえば聞いたことがあるのではないか。
 1970年からリゾート開発されているカンクーンにその王座を渡してしまったが、アカプルコは世界的に有名な海水浴場であった。もちろん今でも世界中から人は来るし、メキシコ人にとっても重要な観光地だ。70年代の日本人にとって「家族で熱海一泊旅行」というのが当時の休みの最大イベントだったように、アカプルコ行きがメキシコシティーや其の周辺に住む中流家庭の楽しみになっている。
 といっても、アカプルコは国際観光地である。現地のホテルやレストランでは米ドルが流通し、其の料金も国際的であり決してメキシコ人仕様ではない。太平洋に面した湾内の海岸は、ほとんどがホテルのプライベートビーチで、そこには外国人と上流階級のメキシコ人しか遊んでいない。
 それでは中流の家族連れはどこに行くかというと、アカプルコの隣の小さな湾で海水浴を楽しむ。どうやらそこがメキシコ人用のアカプルコらしい。其の海岸はまさにメキシコ人のイモ洗い場である。茶色く太ったイモがゴロゴロしている。彼らと一緒にイモになる東洋人の自分はいったい何者だろうと疑問を持ったあと、われを忘れてレストランで久しぶりの焼き魚にがっつく。これも一つのアカプルコの楽しみ方である。
 以前アメリカで、アカプルコに行ったことがあるという白人女性に会った。彼女が言うには「ホテルの周りはきれいだが、一歩でもメキシコ人の居住地区に入るとゴミだらけだし乞食はいるし、とても嫌だった」とのこと。これはよく聞くセリフ。その表面だけしか見ずに「汚い、貧しい、危ない」と嫌う人は多い。もちろん、リッチなリゾートを楽しむアカプルコもよいけれど、出来ればもう一歩踏み込んでアカプルコを知って欲しい。汚く貧しく危ないなかで、一個のイモとなると「アカプルコはメキシコにあるのだな」と実感するのではないだろうか。

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